現在位置:さいたま本部ホーム報道発表一覧 > プレスリリース/輸出用果実のハダニ類を高能率に除去する洗浄装置を開発

プレスリリース


平成22年2月2日

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)

輸出用果実のハダニ類を高能率に除去する洗浄装置を開発
−国産果実の輸出促進に期待−

 ポイント
  • 果実の上下2ヶ所のくぼみを同時洗浄し、連続処理でハダニ類を高能率で除去できる装置を開発

概 要
 (独)農研機構【理事長 堀江 武】生研センターでは、国産果実の輸出促進のため、リンゴ・ナシなど輸出果実の表面に付着しているハダニ類等の害虫を素早く確実に除去する洗浄機を開発しました。この装置は、平成18年に農研機構 果樹研究所および中央農業総合研究センターが開発した揺動噴射式果実洗浄機(農研機構平成18年度主要研究成果情報)を元にしたものです。果実を連続搬送してハダニが付着している上下2ヶ所のくぼみを同時に洗浄する仕組みを新たに開発して、輸出の際に問題となるハダニ類が高能率に除去できるようになりました。

予 算: 運営費交付金
協力機関:果樹研究所、中央農業総合研究センター
特 許: 特開2007-228907
問い合わせ先など
研究推進責任者:生研センター園芸工学研究部 部長 金光幹雄
研究担当者:生研センター園芸工学研究部
野菜収穫工学研究単位 宮崎昌宏 TEL 048-654-7086
広報担当者:生研センター企画部
研究調整役  西村 洋 TEL 048-654-7026
FAX 048-654-7130
プレス用e-mail:iam-koho@ml.affrc.go.jp
開発の背景と経緯
  1. 近年、我が国のリンゴやナシの東アジア諸国への輸出が活発ですが、果実にハダニ類の付着が目立つ場合には検疫で不合格になることがあり、また、ハダニの付着は商品価値を著しく損なうので、貿易業者からはハダニ類の除去を強く求められています。
  2. これまでは、果実洗浄機がなかったため、果実1個ずつをエアガンによる手作業で処理していましたが、多くの時間がかかっています。そこで、農研機構においては、ハダニ類除去作業の省力化のため、これまでに揺動噴射式果実洗浄機(図1)を開発しましたが、果実をひとつひとつ機械にセットする必要があり、産地からはより一層、高能率に除去作業を行うことができる果実洗浄機の開発が強く求められています。
  3. そこで、平成20年度から、連続的に洗浄ができるよう果実の上下2ヶ所のくぼみに同時に噴霧できる洗浄機の開発に着手しました。平成20年度に、新たな連続搬送式果実洗浄機を試作し、全国から集めたハダニが付着したリンゴを用いて性能試験を行いました。
  4. その結果を踏まえて、平成21年度は試作機を改良を行い、弘前市で現地試験を行いました。
連続搬送式果実洗浄機の概要
  1. 開発したのは、ターンテーブルの搬送トレイに果実を供給し、洗浄後に取り出す連続搬送式果実洗浄機です。果実上下2ヶ所のくぼみに同時に微細化した水滴を含んだ圧縮空気(空気圧0.8MPa程度)の旋回流を噴射してハダニ成虫類を除去します。ノズル位置は果実の高さに応じて4段階(85、95、105、115mm)に自動調整できます。搬送速度は、果実へのハダニ類の付着状態や作業人数に合わせて0.02〜0.16m/s(0.1〜0.9果/s)に調整できます(図2、図3、表1)。
  2. 連続搬送式果実洗浄機によりリンゴ果実表面に付着した休眠態ナミハダニ雌成虫を完全に除去した除去果数割合は、エアガンを用いた慣行作業を上まわり、揺動噴射式果実洗浄機と同等の95%と高くなっています(図4)。また、コナカイガラムシが付着したナシ果実に対する除去果数割合は、慣行作業や揺動噴射式果実洗浄機と同等の100%です。
  3. リンゴ「フジ」に対する供給から、取り出しまでを行う単位時間当たりの処理果数は、慣行の1人作業の2.7倍です。また、輸出用リンゴ「金星」における処理果数は揺動噴射式果実洗浄機と比較して、1人作業では約1.6倍、果実の供給と取り出しを別々の作業者が行う2人組作業で約3.7倍と、高い処理能力を持っています(図5)。
連続搬送式果実洗浄機の活用面と留意点
  1. 果実直径80〜110mm、果実高さ80〜110mmのリンゴ、ナシに使用できます。リンゴのハダニ成虫類、ナシのコナカイガラムシおよび果実のくぼみのゴミなどの除去に使用できます。水滴を含まない空気噴射だけの清浄処理も可能です。2010年度に市販化する予定です。
  2. リンゴの下側のくぼみにあるがく(萼)片に囲まれた空洞部分に生息しているハダニ成虫類は除去できません。また、ハダニの越冬卵については処理時間を3秒程度に長くする必要があります。
  3. 除去精度を高めるために、果実のくぼみがノズルへ正対するように搬送トレイへ供給する必要があります。
今後の予定・期待
 今後、平成22年度の早期市販化に向けて技術提供を積極的に進めます。
用語の解説
 リンゴに付着するハダニ:
 ナミハダニの休眠態雌成虫(体長約0.5o、鮮やかなオレンジ色)かリンゴハダニの休眠卵(体長0.1o、赤色)である場合が多いです。

 揺動噴射式果実洗浄機:
 果実のくぼみの部分1か所にむけて、圧縮空気の高速気流と微細化した水滴の混合旋回流を吹き付けてハダニを除去します。リンゴを台座にセットすると近接スイッチによりエアシリンダで揺動するフレキシブルノズルから混合旋回流が自動噴霧します(農研機構平成18年度主要研究成果情報)。
図1 揺動噴射式果実洗浄機

図2 連続搬送式果実洗浄機

表1 連続搬送式果実洗浄機の諸元

図3 連続搬送式果実洗浄機を用いた一人作業風景

図4、図5