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プレスリリース


平成21年11月4日

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)

脱穀にかかるエネルギーを低減できる自脱コンバインが完成

 ポイント
  • わらくずなどの流れを制御する弁(送塵弁)の開度を制御できる自脱コンバインを開発
  • 脱穀にかかる負荷を安定化し、脱穀に必要なエネルギーを低減
  • 可動する送塵弁でわらくずなどの滞留を防止

概 要
 (独)農研機構【理事長 堀江 武】生研センターでは、生研センターで開発した送塵弁開度制御機構(脱穀部の送塵弁開度を弾性部材(ばね)により調節する機構)を搭載したコンバインを三菱農機株式会社と共同で開発し、実用化に向けた実証試験を重ね、この度完成しました。
 開発した機構の搭載により、収穫作業時の脱穀にかかる負荷の変動を小さくすることで動力エネルギーが抑えられ、省エネに貢献できます。また、作物の状態や作業条件に合わせて開閉していた送塵弁の調節が不要となり、オペレータへの負担を軽減できます。平成22年からの市販化に向けた準備を進めています。

予 算: 経常研究費
共同機関:三菱農機株式会社
農林水産省委託費(担い手の育成に資するIT 等を活用した新しい生産システムの開発
「超低コスト土地利用型作物生産技術の開発」)
問い合わせ先など
研究推進責任者:生研センター生産システム研究部 部長 宮原佳彦
研究担当者:生研センター生産システム研究部
収穫システム研究単位 梅田直円 TEL 048-654-7077
広報担当者:生研センター企画部
研究調整役  西村 洋 TEL 048-654-7026
FAX 048-654-7130
プレス用e-mail:iam-koho@ml.affrc.go.jp
開発の背景
 日本の水稲や麦の収穫に利用されている自脱コンバインは、刈取条数にかかわらず搭載するエンジンの高馬力化を図る傾向にありますが、高馬力化は機体価格を押し上げるだけでなく、昨今の燃料価格高騰も相まって燃料にかかる費用の増加をもたらします。これを解決するためには所要動力(機械を動かすために必要な力)の低減が必要であり、全体の30〜40%を占める脱穀部の動力低減が求められていました。
送塵弁開度制御機構の開発の経緯
  1. 自脱コンバインの脱穀部は、フィードチェーン、こぎ胴、受け網、送塵弁等で構成されています(図1)。刈り取られた水稲は茎の部分をフィードチェーンではさまれ、穂や葉の先端がこぎ室に供給されます。こぎ室に供給された穂は、こぎ胴の周囲にあるこぎ歯によって脱穀されます。また、葉の先端からはこぎ歯の打撃によってわらくずが発生します。脱穀された籾の一部とわらくずはこぎ胴の周囲を回転し、送塵弁の働きによって後方へ移動しながら籾とわらくずが分離され、受け網から選別部へ落下します。
  2. 送塵弁は、こぎ室で籾とわらくずの混合物が滞留する時間を調整する機能があります。送塵弁の開度を大きくすると、混合物の流れが良くなり滞留時間が短くなります。滞留時間が短くなるとこぎ室内の混合物が少なくなり、こぎ胴の抵抗が小さくなるので脱穀動力が小さくなります。しかし、滞留時間が極端に短い場合にはわらくずと籾の分離が不十分となり、籾のロスが大きくなる可能性があります。逆に、送塵弁の開度を小さくすると、籾のロスの心配は減りますが、脱穀動力が大きくなる可能性が増加します。
  3. 従来の機械では、収穫作業時に送塵弁があらかじめ設定した位置で固定されているため、こぎ室に供給される収穫物が増加すると混合物の滞留量が増加し、脱穀動力が大きくなります。そこで、生研センターでは、混合物が過度に滞留し送塵弁にある一定以上の力が作用すると、送塵弁が開いて一時的に混合物を逃し、脱穀動力を安定化できる送塵弁開度制御機構を開発しました。この機構を使う事により脱穀動力を日平均8%程度低減する事ができます。
送塵弁開度制御機構付き自脱コンバインの概要
  1. 実用化に向けた実証試験の結果、開発した送塵弁開度制御機構を搭載した自脱コンバインが完成しました。
  2. 送塵弁開度制御機構は、送塵弁、ねじりコイルばね等で構成されています(図2)。収穫作業時、送塵弁は、あらかじめ設定した位置(図2のAの位置)で作用しています。しかし、こぎ室の中に籾とわらくずの混合物が過度に滞留すると送塵弁へかかる力が大きくなり、送塵弁が開き(図2のBの位置)混合物を逃します。混合物が通過し滞留が解消すると、送塵弁は「通常」の位置に戻ります。
  3. 混合物の滞留による脱穀にかかる負荷の急増が抑えられるので、オペレータが作物条件や作業条件にあわせて行っていた送塵弁の開度調節をする必要がなく、オペレータへの負担を少なくすることができます。また、収穫作業時の脱穀にかかる負荷の変動を小さくすることで所要動力が安定化し、省エネに貢献できます。
今後の予定・期待
 開発した機構を搭載した2条刈り自脱コンバインが、三菱農機株式会社より、平成22年に市販される予定です。来年度の収穫作業での活躍が期待されます。
図1 自脱コンバイン脱穀部および選別部の構造

図2 送塵弁開度制御機構の構造